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2020年07月27日
エネルギー密度と信頼性を向上させたリチウムイオン電池
スリーダムが2021年から量産開始し、産業用途向けの海外市場へ展開

 東京都立大学発のベンチャー、株式会社スリーダム(横浜市、松村正大社長)は、エネルギー密度と信頼性の双方を高めたリチウムイオン電池の開発に成功しました。

 リチウムイオン電池は、電気自動車(EV)や、スマホやドローンなどの小型民生用途、太陽光パネル付住居に併設させる定置型蓄電システム等を中心に、世界中で導入が拡大しています。

 しかし、リチウムイオン電池には電解液などに可燃性の材料が多く使用されており、急速な充放電を繰り返す等の使用方法によって、正極材料として用いられているリチウムニッケルコバルト複合酸化物が局所短絡等によりジュール発熱が生じた際、その正極材料が熱分解して酸素放出と同時に電解液を燃焼させて発火に至るおそれがあります。そこで、他のより耐熱性の高いリチウム複合酸化物の正極材料等に代えると、エネルギー密度が低下してしまうという課題があります。よりエネルギー密度の高い電池が求められている状況下、エネルギー密度を低下させずに如何に信頼性を高めるかが課題とされていました。

 今回スリーダムは、正極材料の一部に耐熱性の高い材料を混ぜることで、電池の信頼性を高めつつ、同時にその混ぜ方に独自技術を活用することで、電池のエネルギー密度の維持、向上にも道筋をつけました。また、この材料はレアアースであるコバルトフリーの材料で構成されていて、電池の中の正極材料中に占めるコバルト比率を削減できるため、将来的な市場価格の変動や資源不足の解消につながる技術です。

今回、開発に成功しました新型リチウムイオン電池は30Ah級のパウチセル形状で、当社独自のネットワークとシンガポール拠点等を活用し、東南アジアを中心とした複数社の企業に対してサンプルワークを開始しており、さらに、当社の米国関連会社で電動船事業を手掛けるLAVLE社製品への搭載を検討しています。現在、提携先の電池メーカーと連携し、既存工場の一部を活用し、拡張する形で2021年から量産販売予定としています。

 今後、よりエネルギー密度の高い材料を用い、当社独自の均質な三次元空孔構造を実現したセパレータ技術を応用することで、信頼性を高めつつ、エネルギー密度のさらなる向上をはかってまいります。

以上

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